弁護士の大久保賢一さんより、書評を頂きました。

この本は、本当のノンフィクションです。
最後のページに「これは、空想にもとづく作り話ではありません。」とあるとおりです。
私は、日本弁護士連合会の有事法制対策本部というところで、この国の戦争体制作りについての動きを追っていますが、まさにこの絵本のとおりなのです。

今、政府は、この日本を、戦争はしない、戦力は持たない、交戦権は持たないとする徹底した平和を求める国から、アメリカと協力して、世界のどこででも戦争ができる国にしようとしているのです。
政府は、戦争は相手のあることだから、自分の国だけが戦争をしないといってもだめなのだ、敵に攻められたときに備えなければいけないというのです。
けれども、武力攻撃事態法には、「アメリカと緊密に協力する」とはっきり書かれています。
その同盟国アメリカは、アメリカに対する武力攻撃がないにもかかわらず、自国の安全を口実として世界各地で戦争を引き起こしています。
日本に戦争を仕掛ける国などないといいながら戦争の準備をするのですから、アメリカと同様に、先制的に武力攻撃に出ようとしていると考えるのが自然でしょう。
アメリカの正義がいかにでたらめなものかは、アフガニスタンやイラクの現実を見れば明らかです。
罪もない子どもたちまでもが犠牲になっているのです。

圧倒的な軍事力に物を言わせて気に入らない政権を打倒してしまうなどということは、切り取り自由の世界を作り出すことになります。
そのような世界でつらい目にあうのは弱者だけです。
強者は富と名声を手に入れることになるのです。
国民は、政府が引き起こす戦争のために、生命も自由も財産も提供せざるを得ないことになるのです。

国家と国民の安全のために戦争は不可欠だというのはフィクションです。
アメリカと日本の支配者のために、国民が戦争に動員され、生命と自由を奪われるというのはノンフィクションなのです。
そのリアリティをわかりやすい文章と印象的な絵で語りかけている絵本です。

(2004年6月3日)